読売新聞 2004年4月24日夕刊

葬送どうする 広がる選択肢
(第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部主任研究員、小谷みどり)

死んだら「○○家の墓」に先祖と入る――。最近、こうした「常識」が変わりつつある。
これまでの「○○家の墓」は、子々孫々での継承を前提としてきた。家族のありようや価値観が多様かし、墓の跡継ぎ問題に悩む人は少なくない。「子どもや孫に負担をかけたくない」「転勤族の子どもや結婚した娘には墓守を期待できない」。子どもがいない夫婦やシングルも増加している。継承者がいなければ、無縁墓として処分されてしまう……。
そんな事情もあり、「○○家の墓」にこだわらない人が増えている。なかには墓に納骨しないことを選択する人もいる。
たとえば散骨。今や「思い出の地に撒いてほしい」と考える人は珍しくない。『マディソン郡の橋』や『世界の中心で愛をさけぶ』など話題の純愛小説で、散骨がロマンティックに描かれている影響もあるのかもしれない。

東京・板橋区にある民間火葬場、戸田斎場では全国に先駆け、今月から遺骨を粉砕する機械を導入した。遺族は専用の部屋で作業に立ち会う。外国では一般的に、火葬した遺骨はパウダー状に粉砕され、遺族に渡される。対して日本では、散骨する場合でもいったん遺族のまま持ち帰る必要がある。火葬場で粉骨までの作業が可能になれば、私たちの選択肢はもっと広がる。
粉骨すればかさが減るので、自宅に安置しやすくもなる。愛する配偶者や子どもを亡くし、「遺骨を自分のそばに置いておきたい」と願う人は多い。
三年前に公開されたロバート・デ・ニーロ主演の映画『ミート・ザ・ペアレンツ』では、祖母の遺灰が入ったつぼが暖炉の上にさりげなく飾られていた。欧米では、こうした光景は珍しくない。そのため、骨つばの種類も豊富にある。花瓶型、イルカや天使、本、おわん型など、とても骨つばとは思えないデザインが多い。材質もブロンズやスチール、石、ガラスなどさまざまだ。

そもそも「○○家の墓」が日本で一般化したのはせいぜい明治末期以降。歴史があるとはいえないのだ。世間体、死への畏怖、家意識、親せきとのしがらみ、習慣。葬送にはさまざまな要素が絡み合う。しかし立派な先祖墓も、自宅での安置も、散骨も、故人をしのぶ遺族の気持ちには変わらないはず。

私はターミナルケアや葬送の問題について調査研究しているが、自分らしい最期の実現には、地域や社会の援助、多様な受け皿が不可欠だと考える。日本でも納骨以外に選択肢が広がっていくのは歓迎すべきことだと思う。